【モバマス】 木村夏樹「道とん堀には人生がある」
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39:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/15(月) 05:19:52.29 ID:VQj+6fZHO


――拝啓 新しい生活に慣れてきたところでしょうか? 心配なことは沢山ありますが そっちに海はありますか?


「ったく、だりーの奴め」


 それは、誰かにとってとても大切な思い出の曲。
 音は記憶と直結する。流れた瞬間、夏樹の脳裏に様々な場面が投影され、鮮やかに駆け巡る。


「昔ながらのお菓子が好きで いつもの席縁側へ」


 気付くと、無意識のうちに彼女は歌っている。


「陽が差すタバコの煙さえも 鮮明に覚えている Ah」


 プロデューサーも連られて口ずさむ。


「子守唄はトントン船の音 沖に向かう 晴れの日も雨の日も曇りの日も」


 海岸線。祖父が運転するカブの荷台に乗る夏樹。大きな背中と大きな海……。
 いつしか彼女はギターを持ち、縁側で弾き語りの練習をしている。そんな夏樹の横でタバコをふかしながら、静かに晩酌をする祖父。


「声が聞きたくなって あなたの真似をして笑った」
「四時四十九分 ありふれた景色が変わった Ah」


 病魔に侵されながらも懸命に生きた祖父。そんな祖父がバイクをいじっている、その背中……。


「弱音一つ吐かず 海へと向かう 平気なふりに何度助けられただろう」
「遠く驚くほどに遠く 旅立つあなた遥か彼方 ねぇ 思うように歌えばいいと 思い通りにならない日を」


 そう教えてくれたね、あんたは――夏樹の頬を涙が伝う。


『……ありがとうございました! お送りしたのは、WANIMAで、1106でしたー!』


 思い出は巡り、彼女は涙を拭う。


(じーさん、あんたは永遠に生き続けるよ。誰かの歌と、誰かの思い出の中で)


 過ぎ去っていく景色の中、夏樹はゆっくりと目を閉じ、惜別の想いを噛み締めた……。






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