【モバマス】 木村夏樹「道とん堀には人生がある」
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25:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/15(月) 04:18:04.91 ID:VQj+6fZHO


「親戚の話は置いておいて……。少なくとも家族はお前を『お荷物』とは思っていないと思うぞ」
「……!」


 プロデューサーの言葉にハッとした夏樹。思わず隣の彼に向き直る。
 今度はプロデューサーが海を眺めながら、静かに語っていった……。
 いつの間にタバコをふかし、ただ漠然と彼方を見つめて。


「あのバイク、じーさんの愛車だったんだろ? 昨日、色々と話を聞いたよ」
「……」


――もうぶっ壊れてもおかしくないのに、ああして今も動いてる。じーさんが亡くなって「木村モータース」も廃業して、それでもわざわざ違う整備屋に頼んでメンテナンスしてもらってるんだってな。
 それはきっと、家族もじーさんの形見を失いたくなかった。つまり、家族もじーさんを忘れてなんかいないんだ。

 そして、そんなじーさんの血を色濃く受け継いだお前がかわいくて、お前が帰ってきたらいつでも乗り回せるように、ああしてバイクを万全な状態に保っているんだ。

 芸能活動にしたってそうだ。最初両親は反対してたそうだな。それで、お前はこんな地元に嫌気が差してて。色んな要因が絡んで地元を飛び出した。
 でも兄貴だけじゃなく、実は両親も、家族全員もお前を応援してる。

 そうじゃなかったら、きっと昨日みたいな団欒なんて生まれない。
 そうじゃなかったら、お前の応援グッズや、お前のCDや、お前が出た雑誌を茶の間に飾ったりなんてしてないし、出演したテレビの録画をわざわざディスクに焼いたりしてない。

 だからそうだな。きっと、家族全員が言いたいことを言えなかったんだ。
 言いたくて、でも言ってしまえば壊れてしまうんじゃないかと思って、だから言えなかった。


 全ては、些細なすれ違いだったんだ――ゆっくりと語った彼は、虚空へ向けて煙をぼうっと吐き出した。






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