【モバマス】 木村夏樹「道とん堀には人生がある」
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22:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/15(月) 03:51:11.86 ID:VQj+6fZHO
彼の違和感、その答えは翌日にあった。
「すみません、手伝っていただいて……」
「いえ、お気になさらず」
翌日、木村家の朝は早かった。
大広間を幾度となく往来する家族の面々。座布団を並べたり、テーブルを運んだり、皆一様に何か作業をしている。黒い礼服を身に纏った夏樹も、皆と同様にただ黙々と作業を進めていた。
礼服――そう、今日は木村家の祖父の年忌法要その日であった。いわゆる法事である。
プロデューサーも今日がその日ということは以前の電話口で知らされていた。この法要があるため、「なんとか夏樹を呼び戻して欲しい」とのことであったのだ。
七回忌ということらしく、法要も近しい親族のみを招き自宅でしめやかに執り行うようだ。
プロデューサーに関しては、何のゆかりもない彼が参列しても良いかというと、それはそれで非常識というものであろう。
ただ、一宿一飯の恩義があるし、夏樹と関係がある手前何もしないわけにもいかない。彼はそう思って、一応のところ準備を整え、こうして会場の準備も手伝っていた。
そうして一通りの設営が済み、彼は香典やお供え物を母にそっと手渡す。
そこまでするなら法要にも参列すれば……と思うだろうが、前述のような事情もあり、また、準備が終わったからと言って手ぶらで帰るわけにもいかない、そんな彼の配慮であった。
「こればかりは、申し訳ありませんが……」
しかし、さすがに香典を受け取ることはできないと言われ、そうして木村家を後にすることとなった。
「本当に、色々とご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした」
「いえ、こちらこそご迷惑をおかけしました……」
やがて、どこかはっきりとしないモヤモヤを抱えたまま、プロデューサーは木村家を出る。
夏樹は最後、「アタシのことは大丈夫だよ。ありがとな、プロデューサーさん」と言って彼を送り出したが、その表情はまだ曇っていて、彼はそれが気がかりでならなかった。
(あいつが実家に帰りたくなかったのは、法事に出たくなかったから……?)
木村家を出たプロデューサーは適当に時間を潰し、やがてロードサイドのファミレスにたどり着く。
タバコを吸いながら一人考えを巡らせるが、結局答えは出なかった。
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