鷺沢文香「本に、命を」
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6: ◆jEbRvHU8C2[sage saga]
2019/07/14(日) 15:52:38.36 ID:UfnhAP/w0
トンネルを抜けると雪国であった。
という文を引用したくなるほど、物置の中は敷居を境目に、
現実と切り離された空間のように感じました。

積もりに積もっていた埃が風を受けて舞い上がり、
雪の降るような速さでまた降り積もっていきます。
ともすれば、お昼前の日差しを浴びてキラキラと浮き踊る様は、
さながらダイヤモンドダストでしょうか。
などと、ただのダストでしかないそれが舞う様子に、不覚にも想わず魅入ってしまいました。
…時間は大丈夫なのかとプロデューサーさんに声をかけられるまで。

咄嗟に言葉を返したときには、彼は既に簡素なマスクを装着し、物置に入らんとしていました。
その行動の速さと問答声の抑揚に、…よもや、積もった埃を見て私が尻込みした、
そう思われてしまったのではないかと、場違いな不安がよぎります。
こんなことで足を止めてしまう、本が関係していながら汚れを嫌がる程度の私であると、
…ともすれば、嫌われてしまったのでしょうかと、転がり出した不安は雪だるま式に肥大化していきます。

では早速とりかかりましょうかと、せめて平静を装いながら、彼と同じマスクで口元を覆い、
早足で敷居を跨いでその背を追いかけました。


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