121: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2019/07/14(日) 21:58:53.64 ID:8naFKaaW0
「正史……正しい歴史、ですか……?」
「前回の我々はそこを辿れたってことか?」
122: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2019/07/14(日) 22:01:03.11 ID:8naFKaaW0
――では、我々の場合はどうすれば良いか。
「マカロニ作戦を決行し、ペパロニが全てのデコイを配置し、大洗に数が合わないのを見破られ、徐々にアンツィオの車輌を削られ、負ける」
123: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2019/07/14(日) 22:02:42.24 ID:8naFKaaW0
「そんなに難しく考える必要ないわよ」
ケイが左右に指を振る。
124: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2019/07/14(日) 22:04:18.13 ID:8naFKaaW0
「さて、これで伝えなくちゃいけないことは全て伝えたわ。あとは各人がクリアを目指せば、きっとゴールに辿り着ける」
イレーザーを手に取ってホワイトボードの図を消し、私の隣を通り過ぎる。
その背中へ、私は声をかけた。
125: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2019/07/14(日) 22:05:32.72 ID:8naFKaaW0
「でも一つ訊かせて、アンチョビ」
「なんだ」
126: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2019/07/14(日) 22:06:59.98 ID:8naFKaaW0
私は答えた。
「そりゃあそうだ。当たり前だろう」
127: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2019/07/14(日) 22:09:36.18 ID:8naFKaaW0
「なあに?」
「……ああ、安心して。貴女がどの選択をしようと、第1ステージはきちんと毎回クリアするから」
「まぁ、たまにはしゃいでゲームオーバーしちゃうかもしれないけど、それも貴女には関係ないしね」
128: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2019/07/14(日) 22:10:50.39 ID:8naFKaaW0
残された我々はしんと静まりかえってしまったが、やがてカルパッチョが「ドゥーチェ」とぽつり言葉を吐く。
その声色がなんだか湿っぽく、私はそれを吹き飛ばすよう、できるだけ明るく言葉を返した。
129: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2019/07/14(日) 22:14:22.44 ID:8naFKaaW0
一時間ほどかけてカルパッチョとの情報交換は終わった。
試合当日の流れは把握できたし、諸処の動きや台詞もおおむね思い出せただろうと思う。
始める前は無理だろうと思っていたのだが、カルパッチョの記憶に刺激されて私の記憶が蘇り、反対に、私の記憶に刺激されてカルパッチョの記憶が蘇り。 相互作用がうまく働き、思いのほか、細部まで整理できた。
130: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2019/07/14(日) 22:16:06.28 ID:8naFKaaW0
当日までの残りの時間は全て試合の練習に割いた。
負けるために練習をするというのもおかしなものだが、戦車道はなにも今回の大会で終わりというわけじゃない。
冬の大会だってあるし、他のみんなには来年もある。練習はいつか実になる。
131: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2019/07/14(日) 22:18:33.06 ID:8naFKaaW0
嬉しい誤算だが、今の私はそれを望んでいなかった。
作戦は成功した。しかし目論見は失敗したのだ。
ともかく我々は大洗の背面へ回り込み、全面包囲からの奇襲作戦を行った。
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