まかなかったジュン「なんか、違うんだよな」
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2:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/11(木) 23:42:40.90 ID:WzP8/AKoO
「なんか、違うんだよな」

石膏粘土を捏ねて、顔の造形を作り出す。
しかし、これが非常に難しい。
よく出来たドールとは、顔の角度だけでその表情がコロコロと変わるものだ。
時に嬉しそうで、時に悲しそうで、時には怒っているのか、はたまた拗ねてしまったのか。
そんな、思わず顔色を伺ってしまうような表情を生み出すのが、僕の目指すところだった。
ドールの顔色を伺うというのはなんともおかしな表現ではあるものの、目標は高い方がいい。

でなければ人はすぐに、堕落してしまうから。

「複製することすら、出来ないなんて」

簡単にはいかないだろうとは、わかっていた。
それでも、こうも苦労するとは思わなかった。
ほんの短いひとときではあったものの、すぐ傍でじっくりと見る機会を得た薔薇乙女達の複製すら、僕に作り出すことは出来なかった。

ウィッグや衣装で、似せることは出来る。
しかし、やはり一番重要なのは、表情だ。
彼女達の個性豊かな表情を再現することは、僕の生涯を費やしたとしても不可能だろう。
これは断じて諦めではなく、敬意である。
天才人形師ローゼンへの敬服と畏怖の表れだ。

「よし」

故に僕は自分だけのドールを作ろうと考えた。


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