2: ◆TOYOUsnVr.[saga]
2019/06/28(金) 06:12:16.53 ID:hRYw497E0
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進路希望調査という爆弾が投下されてから数時間が経ってもその威力は絶大で、あたしの頭の中はこの一枚の紙のことでいっぱいとなってしまっていた。
ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつと身の入らない授業が終わり、昼食の時間がやってきてもまだ尾を引いている始末だ。
いつもなら購買へと駆けていくところなのに、どうにも立ち上がる気になれなかった。
「ねぇ、奈緒もしかして今日体調悪い? 保健室で寝ておいでよ」
そんな調子のあたしを見兼ねたのだろう、友人に気を遣わせてしまっているようだった。
「いや、そーいうんじゃなくて……」
「体調が悪いわけじゃないの?」
「うん。大丈夫だぞ、あたしは普通!」
「んー……あのさ、普通に見えないからこうやって声かけてるわけなんだけど」
「……」
「そんな私、信用ないかなぁ。一年生からの付き合いなのになー?」
「その、ほら、気ぃ遣ってもらってんのはわかるし、悪いと思ってるよ。でも、これはあたしの問題、っつーか」
「あっ、アイドルのお仕事の話? 私には言っちゃいけない感じ?」
「そういうわけでもないけど……」
「ほらほら、お悩み相談コーナー開催したげるから話してみな、って」
話したところで解決するわけはない。
頭では理解しているが、ここまで心配してくれている友人に話さないのも良心が痛むから、あたしは胸の内のもやもやを少しずつ言語化していくことにした。
「朝のホームルームでもらっただろ? あれ」
「進路希望調査?」
「そう。それのことでちょっと頭、こんがらがっちゃってさ」
「奈緒、進学しないの?」
「それもまだ決めらんなくて……」
「あー……そっか、そういうことか」
あたしの抱えている悩みを察した友人は腕を組み「そっかぁ……」と繰り返して「難しいね」と言った。
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