【オリジナル・安価&コンマ】宇宙を駆ける者たちの物語Part3
1- 20
116:名無しNIPPER[saga]
2019/07/14(日) 02:36:14.73 ID:1Kwg5KBm0
ベッドにリーネを横たわらせたリヒトは、青年の首根っこを掴んで問う。

「で、あんたはリーネの何なんですか?あんたの口から直接聞きたい」

「僕は『シャルル・ローラン』大尉。EUAS連合月軌道艦隊所属の、第1戦闘航宙隊『パラディン』の隊長を務めております」

「随分と出世しましたねぇ。チャーリー」

「リーネ、顔怖い」

怒気をふんだんに含んだ声で、わざとらしく褒めるリーネ。顔は無表情どころか、絶対零度に到達するほどに冷たいそれをしていた。

「え、えっと、その。出身は木星コロニーの『グレナン』なんですけどね。そこに住んでた時、リーネの面倒を見てました」

なるほど。彼はリーネの所謂『近所のお兄さん』といった立ち位置の人なのか。

彼が屑だとは、リーネから既に聞いている。なら、どこが屑たらしめているのか、はっきりさせようじゃないか。

そう思ったリヒトは、双方に質問をした。

「それで、シャルルさん。どうしてリーネがこんなにブチ切れてるか、心当たりはありますか?」

「ありますよね?それすらも分からないほどに、耄碌してるはずがないですよね?大尉???」

「…リーネを『グレナン』に置いて、僕は脱走しました」

「それだけですか?」

「脱走前に、リーネに希望を抱かせるようなことを言いました…」

それは、今から十年前のこと。まだ四歳だったリーネは、青少年だったチャーリーと二人で暮らしていた。

お互い、親のいない孤児同士。仲良くなるのに、時間はそう掛からなかった。

ある日、半壊した家屋にて。

『今日の晩御飯はこれだけ…。ごめんね、僕がもっと稼げれば…』

『チャーリーはわるくありません。わたしがだめだめだからいけないのです』

『…ねえ、リーネ。今はまだ、こんな暮らししか出来ないけどさ…』

『…でも、いつかお金が貯まったら。二人で地球に住もう。僕たち人類の故郷に行こう』

『それまで、この暮らしを我慢しよう。僕も頑張るから』

『わたしは、チャーリーがいればがんばれます。だから、だいじょうぶです』

モノクロの世界に、花のように可憐な笑顔が咲いた。それがあるから、頑張れた。はずだった。

しかし、それから暫く経過して。チャーリーは『グレナン』から逃亡、EUAS連合に亡命した。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
238Res/102.29 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice