【たぬき】高垣楓「迷子のクロと歌わないカナリヤのビート」
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95: ◆DAC.3Z2hLk[sage saga]
2019/06/19(水) 00:00:28.34 ID:H28+Nx7V0

   〇


「カナリヤというあだ名は、彼女が歌うのをやめたことから付いたの」

 人々に取り囲まれる高垣さんを見ながら、柊さんは小さく言った。

「口を噤んで、一羽きりで自由に飛ぶ鳥。彼女がそれでいいならと、何も言わなかったけれど……」

 また琥珀色の眼がこちらを向く。
 何もかも見透かされるようでいて、奇妙に安心する不思議な瞳だった。

「実のところ少し驚いているの。あの子がここに人を連れてくるなんてこと、無かったから」

 俺はといえば、頭の芯が余韻でまだ痺れていた。
 カップに残ったコーヒーを一気飲みして、かねてから気になっていたことを勢いのままに問う。



「あの人は何者なんですか? 空は飛ぶわ、こんな場所は知ってるわ、これじゃまるで……」

「楓ちゃんは人間よ。私が保障するわ」





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