【たぬき】高垣楓「迷子のクロと歌わないカナリヤのビート」
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87: ◆DAC.3Z2hLk[sage saga]
2019/06/18(火) 23:47:52.41 ID:BLRBsoCc0

 そう、その人は「マスター」と呼ばれていた。

 多分喫茶店のそれをイメージしているのだろう。
 彼女は桜舞う真夏のオープンカフェを一手に引き受け、思い思いの時間を楽しむ人々にドリンクや軽食を提供しているのだった。

 もっとも、高垣さんと柊さんは酒しか飲まないのだが。
 もしかしてマスターは無限の酒樽でも持っているんじゃないだろうか。


「大丈夫?」
「ああ……すみません。コーヒー、いただきます……」
「二人とも普通のペースじゃないから、ついていこうとしたら駄目よ。それを飲んで一息ついて」


 ブラックのまま一口含むと、さっきよりは視界がクリアになる。

 改めてマスターと目を合わせた時、考える前に言葉が口をついて出た。


「……どこかで、お会いしました?」





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