【たぬき】高垣楓「迷子のクロと歌わないカナリヤのビート」
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76: ◆DAC.3Z2hLk[sage saga]
2019/06/18(火) 22:57:34.87 ID:BLRBsoCc0

 その青い瞳がこちらを向いて、ようやく俺の存在に気付いたようだった。

「……そちらの方は……?」
「クロさんといいます。このところ、よくお酒をご一緒してもらってるんですよ」
「そうでしたか……。初めまして……本来は叔父の古書店ですが、不在ですので、私が代理に立っています」
「ああ、これはどうもご丁寧に」

 お互いに、ぺこー。

 なるほど古本はフリーマーケットの定番。
 しかしこの規模となると、本業として表に店を持っていてもおかしくない。

 と、見ている前で古本屋さんはなにやらそわそわしだした。

「……クロさんは……このところ、夢はご覧になられますか?」
「え? ああ……ええと。いや、最近はとんとご無沙汰かな」

 嘘だ。
 近頃、よく悪い夢を見る。
 昔のことを思い出すことが多いからだろう。忘れるよう努めていても、寝ている間の無意識はどうしようもない。




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