【たぬき】高垣楓「迷子のクロと歌わないカナリヤのビート」
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69: ◆DAC.3Z2hLk[sage saga]
2019/06/18(火) 22:44:43.65 ID:BLRBsoCc0

 話によると「夜市」というのは、いわゆるフリーマーケットのようなものだという。
 みんな個人で出店を出し、多くは趣味、または本業の延長になるものを売っているのだとか。
 とすると、ささやかな規模なのだろう。酒が出るのも野外のビールフェスみたいな感じなんだろうか。


 ……という認識が甘かったことをほどなく思い知らされることとなる。

 電車を降りて歩くことしばし、地下鉄のホームから見たこともない脇道に逸れ、錆の塊めいた螺旋階段を降りて降りて降りた果てに小さなドアがある。
 地下鉄さえ頭の遥か上を走るこの謎空間で、高垣さんはあっさりドアを開けた。

「……なんだ、これ」


 一気に視界が開けたかと思えば、空があった。


 石敷きの長い参道が果てしなく伸びて、巨大な鳥居で等間隔に区切られている。
 道の左右に並ぶのは、縁日を想起させる色とりどりの出店。

 小さなものは移動販売車から、大きなものではサーカスに使われる大型テントまで。
 道脇の広場では移動遊園地が展開されていて、観覧車やメリーゴーラウンドが煌びやかに回っていた。

 暮れなずむ紫色の空は雲ひとつ無くて、中天に満月が冴え、ぽつぽつと星が生まれていた。




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