【たぬき】高垣楓「迷子のクロと歌わないカナリヤのビート」
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◆DAC.3Z2hLk
[sage saga]
2019/06/15(土) 00:20:54.79 ID:xNFFfoZD0
高垣さんはずっと顔を上げていた。花火が終わったあの夜空に、まだ火の残光を見ているように。
その表情があまりにも楽しそうだったから。
輝く顔はいっそ幼くすらあった。雑誌や広告に載る、あの凄絶で研ぎ澄まされた美貌とはまるで違う。
それにしても意外だ。
彼女はどちらかというと、こんなはっちゃけたことをするタイプではないように思えたのに。
人は見かけによらない……というか、最初のイメージ通りとはいかない、ってことなのかな。
どちらが本当の彼女なのかはわからない。
けれどそんな顔を見せられて、改めて腹を立てるほど無粋にもなれない。
言いかけた言葉を飲み込んで、しばらくその横顔を見ていた。
ビルの屋上は街の喧騒も遠い。花火の音も消えた今、辺りは嘘のように静かだ。
高垣さんが、ふと横目に俺を見た。
彼女はこちらに左側を向けている。必然、泣きぼくろを備えた青い瞳とかち合う。
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