【たぬき】高垣楓「迷子のクロと歌わないカナリヤのビート」
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56: ◆DAC.3Z2hLk[sage saga]
2019/06/15(土) 00:15:08.49 ID:xNFFfoZD0

   〇


「…………………………………………」
「ああ、楽しかった!」

 気が付けば、どことも知れない雑居ビルの屋上。
 錆の浮いた室外機のほかには給水塔しか無いそこに仰臥して、俺は命あることの素晴らしさを噛み締めている。

「…………死ぬ、かと、思った」
「本当、すごかったですねぇ。びっくり……あ、はなびっくり♪」
「ダジャレにもなっていない…………」
「公園にも人がたくさんいて。あ、見つからなかったかしら」
「もう、ああいうのは…………」
「次、どこかで花火大会やってません? 検索してみようかしら」
「あのですねぇ! 俺がどんな気持ちだったと!」

 さすがに突っ込まざるをえなくなり、がばっと上体を起こして。
 彼女の横顔を見るなり、そんな気にもなれなくなった。
 



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