【たぬき】高垣楓「迷子のクロと歌わないカナリヤのビート」
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313: ◆DAC.3Z2hLk[sage saga]
2019/09/05(木) 01:34:15.29 ID:9I+qLSeE0

「Pさ――」

 ふらっ――

「……! 高垣さん!」

 咄嗟に、よろけた体を受け止める。
 彼女の体は熱かった。

 汗ばむ肌に、熱を帯びた息。けれど辛そうではない、むしろ力強い息吹を感じさせる。

 高垣さんの全身に、まだステージの残響が染み渡っている。
 今の彼女は、神でも仏でもない。
 走り出したばかりの、ただの新人アイドルだ。

「高垣さん。……楓さん」
「……歌、が」
「はい」
「楽しかったんです。みんな、笑っていて。私も……姉さんも」
「はい」
「私……ここに、いたいと思えました。ねえ……『プロデューサー』」

 俺の腕の中で、楓さんが顔を上げる。汗で額に張り付いた汗が生々しい。
 互い違いの色の瞳が、どちらも眩しいほどに輝いていて。




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