【たぬき】高垣楓「迷子のクロと歌わないカナリヤのビート」
1- 20
312: ◆DAC.3Z2hLk[sage saga]
2019/09/05(木) 01:33:04.82 ID:9I+qLSeE0

  ◆◆◆◆


 裏方まで届く歓声は、小さなハコにはまるで見合わないものだった。
 人はとっくに席を溢れ、フロアを埋め尽くすほどに集まっている。客も、店員も、その音に釘付けだった。
 
 渦中の歌姫は挨拶もそこそこに、逃げるように舞台を後にした。

 引き止める声もあっただろう。彼女が何者なのか知らない客も多かっただろう。
 この出来事は、後に「高垣楓の歌い逃げ」として伝説化することとなる。


「はぁ、はぁ、はぁ……っ」

 帰ってきて息を切らす彼女は、決して嫌だからそうしたのではない。

 どうしようもなかったのだ。身の内に膨れ上がる熱を。
 自分の意思で、自分の歌を歌い上げたその昂揚を。

 歓声はまだ鳴りやまない。顔を上げる高垣さんの額には、玉の汗が浮かんでいた。




<<前のレス[*]次のレス[#]>>
328Res/204.86 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice