【たぬき】高垣楓「迷子のクロと歌わないカナリヤのビート」
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◆DAC.3Z2hLk
[sage saga]
2019/09/05(木) 01:33:04.82 ID:9I+qLSeE0
◆◆◆◆
裏方まで届く歓声は、小さなハコにはまるで見合わないものだった。
人はとっくに席を溢れ、フロアを埋め尽くすほどに集まっている。客も、店員も、その音に釘付けだった。
渦中の歌姫は挨拶もそこそこに、逃げるように舞台を後にした。
引き止める声もあっただろう。彼女が何者なのか知らない客も多かっただろう。
この出来事は、後に「高垣楓の歌い逃げ」として伝説化することとなる。
「はぁ、はぁ、はぁ……っ」
帰ってきて息を切らす彼女は、決して嫌だからそうしたのではない。
どうしようもなかったのだ。身の内に膨れ上がる熱を。
自分の意思で、自分の歌を歌い上げたその昂揚を。
歓声はまだ鳴りやまない。顔を上げる高垣さんの額には、玉の汗が浮かんでいた。
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