【たぬき】高垣楓「迷子のクロと歌わないカナリヤのビート」
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262: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2019/09/03(火) 01:14:46.15 ID:/BT2JQWN0

  ◆◆◆◆


 どれほど歩いただろう。

 景色はずっと桜吹雪。壁やら障害物の類もありはしない。

 手には高垣さんの傘。一応差してはいるものの、降り積もる花弁と雪が重くて、定期的に傾けなければ持っていられないほどだ。

 こうなると方向感覚と時間間隔すら薄れて、自分がどこを向いているのかもわからない。
 もし桜が消えれば、そこは無限に広がる平坦な砂漠なのかもしれない――そんな錯覚すら抱くほどだった。

「はぁ、はぁ……ふぅ……くそっ」
 
 いったん足を止めて深呼吸する。春と冬の混ざり合った奇妙な空気が鼻に抜ける。

 正しい道を見つけるか、心から諦めない限り、ここから出られることは永遠に無い。柊さんはそう言った。
 ことによると、永遠にこの桜吹雪を彷徨い続けるかも。なかなかぞっとしない想像だった。

「……よ、し……っ」




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