【たぬき】高垣楓「迷子のクロと歌わないカナリヤのビート」
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215: ◆DAC.3Z2hLk[sage saga]
2019/08/22(木) 00:33:50.90 ID:rmOYl90d0

 と。
 タクさんが急に正気に戻り、ババッと周囲を見渡す。
 休憩所に俺達以外いないことをしつこく確かめ、声をひそめて言う。

「…………おい、今俺が言ったこと誰にも話すなよ」
「は? なんでまた」
「いいから! アイツらに聞かれたら何言われるかわかったもんじゃねぇ!」

 よくわからんが大変らしい。
 今の話は内緒にしておくと約束すると、タクさんは身の縮むような溜め息を吐いた。

「俺もヤキが回ったぜ、まったく……。こんなんガラじゃねぇって思ってたんだけどな」
「いいことでしょう。人は変わるってことですよ」
「そういうモンかねぇ……」

 人は変わる。
 それはそうだ。
 本心からそう思っているのに、口から出る言葉が自分でも驚くほど空疎に感じられた。
 だったらお前はどうなんだとどこかの誰かが言っている気がする。
 いいや、俺は変わりようがない。何を得てもいないし、失ってもいない……はずだ。




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