【たぬき】高垣楓「迷子のクロと歌わないカナリヤのビート」
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207: ◆DAC.3Z2hLk[sage saga]
2019/08/22(木) 00:19:03.69 ID:rmOYl90d0

   〇


「はぁ〜ダレた……地獄のスケジュールだぜマジで……」
「年越しまでは踏ん張りどころだからなぁ……」

 このところは気軽に飲み会も開けなくなった。
 事務所の廊下でコーヒー片手に、タクさんヨネさんと近況報告がてらの世間話をしている。

 夏ごろから自分の部署を持つようになった二人は、もちろんニューイヤーライブの戦場ど真ん中にいた。
 スタドリを空ける本数もうなぎ上りだという。これもプロデューサーの宿命というやつか。

「頑張ってください。俺も応援してますよ」
「まぁ、ここまで来たからにはやるけどよ。アイツらもそれなりにサマになってきたみてぇだし」
「そういえば、Pさんは? 何かやってたんじゃないのか?」


 高垣楓。


「……え? いや、俺はいつも通りですけど」

 一瞬、頭の中にまた「その名前」が浮かんだが、何も言わなかった。
 どうしてこれほど引っかかるのかもわからなかったから。
 ヨネさんは不思議そうに首を捻る。

「あれ? そっちはそっちで、何かしてるって聞いてたような……」
「聞き間違いじゃないですか? それか人違いとか」
「何お前ヒマなの? じゃあ俺んとこ手伝ってくんね? レッスン場押さえんのも一苦労でよ」
「いやいやこっちも普通に仕事ありますからね!?」




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