【たぬき】高垣楓「迷子のクロと歌わないカナリヤのビート」
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185: ◆DAC.3Z2hLk[sage saga]
2019/07/27(土) 16:29:03.55 ID:aiDwMVos0


「……こんな話をしたのは、志乃さん以外にはあなたが初めてです。
 姉は……樒は、あなたに何か、私たちと似たものを感じたんだと思います」


 頬に触れていた手が離れる。
 高垣さんはそっと俺から離れ、傘を差してくれた。慌てて膝立ちになり彼女と向き直る。

「だから、これ以上一緒にいることはできません。……あなたまで、連れていかれてしまいますから」

 高垣さんは最初から、俺が見ているような領域の人ではなかった。

 彼女の笑顔はひどくぎこちない。全て打ち明けるだけでも相当の勇気を要しただろうことがわかる。
 一介のサラリーマンにこれ以上何ができるというのだろう。
 俺の手には余る――柊さんが言う、まさにその通りの事態じゃないか。

 だけど、何か考える前に動き出していた。

 足を一歩前に、手を伸ばして。
 理屈とか損得ではない、もっと根本的な感情のうねりに押されて、目の前の人を行かすまいと。

 その一歩から先が、嘘みたいに遠いことを知る。




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