【たぬき】高垣楓「迷子のクロと歌わないカナリヤのビート」
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184: ◆DAC.3Z2hLk[sage saga]
2019/07/27(土) 16:26:21.22 ID:aiDwMVos0

「人は私を通して、色んなものを見ます。信仰、理想、羨望、嫉妬……あるいは、遠い過去の後悔」

 ぎくりとした。

 高嶺の花とは、往々にして見る者の様々な認識を投影するものだ。
 強固に積み上げられたイメージの鎧が、その人の実情を覆い隠す。
 本人が望むと望まざるとに関わらず。能力や容姿といった外面的要素に、他人が張り付けていった値札の数々。

 トップモデル。夜市の歌姫。憧れの美女。神に近い何か。

 他人を前にした時、彼女は常に「何者か」であることを強いられる。

 俺自身、彼女にそれを求めてはいなかっただろうか。
 歌や実力といった付加価値に魅入られながら、その奥にある「高垣楓」をどれほど知っていたというのだろう。

 高垣さんは己がそう在ることを受け入れていた。

 諦めのためか。生い立ちのせいか。


 身の内に神を宿して、多分ずっと遠い場所から、人の輪を見つめるだけで。




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