【たぬき】高垣楓「迷子のクロと歌わないカナリヤのビート」
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155: ◆DAC.3Z2hLk[sage saga]
2019/07/14(日) 01:05:47.94 ID:TmI5fe2I0

「……なんですって?」

「ほらまた、悲しそうな顔。本当のところを聞かせてください。あなたは、自分が寂しいだけじゃないんですか?」

 傘が傾く。高垣さんが体ひとつ分、こちらに近付く。
 高垣さんは笑っていた。 
 その美貌から目が離せない。

「歌やアイドルなんて建前。本当は、ずっと傍にいてくれる誰かが欲しいだけ」

 幼子に言い聞かせるような声色が染み込む。
 その声に耳を傾けていると、雨音さえも遠くなって。

「自分が見つけて、自分から決して離れない。夢でも幻でもない、あなただけのお人形が。……違いますか?」


 人形の夢を見る。
 埃を被った、かわいそうな彼女たちの夢を。
 あの人たちはもういない。消えてしまった。

 十年前から変わることなく、ショーウインドウの前に立ち尽くす少年は何を思っていたか。



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