38: ◆Kg/mN/l4wC1M
2019/08/15(木) 20:53:03.55 ID:An8umD0so
このみは桃子の言葉を聞いて、改めていま自分がこうしているのが不思議だな、と感じていた。
学生時代の頃からドラマなどの映像作品を見ることはしばしばあったが、まさか自分が出演する側になるとは思ってもみなかった。
それどころか、見知った仲とはいえその共演者とこうしてその作品を見返しているというのは、人生何があるかわからないものだ。
当時の自分であれば色紙とペンを持ってサインを頼むような状況だろうな、と。
このみが隣に目をやり、真剣な表情で画面を見つめる桃子を見るたびに、そうした感覚を実感した。
二人とも静かに鑑賞していたが、時折いくらか言葉を交わした。
それは制作側だからこそ知っている裏設定的な部分のことであったり、撮影当時の思い出話、公開までの期間の話、演技の技術的な話など様々だった。
演じることに長く身を置いてきた桃子の話は、その中でもこのみにとって参考になる部分が多かった。
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