【ミリマス】馬場このみ『衣手にふる』
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284: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/06/12(金) 01:12:59.54 ID:Bg3Eqo0s0

「だから、今は……。」

このみは、目線が下がったのが、自分でも分かった。
このみの胸の中は、溢れる出逢いの愛しさと、それでも少しずつにじり寄ってくる別れの切なさとが、ない交ぜになったようだった。
その気持ちは、相手を大切に想っているからこそなんだと、このみは思った。

「正直、みんなと会えなくなる事が……、本当に、寂しい。」

客席の人々が、ざわついた。
その中で、このみは大切な人を探した。
若い男も、首飾りをつけた女性も、眼鏡をかけた少年も──。
彼らが、桃色の光を胸の前で抱えたままで、声を出せずにいるのを、このみはステージの上から見つけた。
その表情は、今にも泣き出してしまいそうだった。
そんな彼らを見て、丁度今の自分も彼らと同じような顔をしているんだと、このみは分かった。


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