10: ◆WXIE0KHOPc[saga]
2019/06/11(火) 23:31:52.83 ID:17uvMvXx0
「智絵里、出来たわよ……ってどうしたの床に座り込んで」
お母さんの声で顔をあげる
「あっ、うん。ちょっとね」
11: ◆WXIE0KHOPc[saga]
2019/06/11(火) 23:33:26.77 ID:17uvMvXx0
スクラップブックを大切に抱えリビングへおりる
肉じゃが、レタスとミニトマトのサラダ、ご飯、お味噌汁
テーブルには料理が並べられお父さんがひとり静かに座って待っていた
背筋をピンと張った佇まいはポージングの参考にしたいくらいだ
お母さんがお父さんの隣に、私はお母さんの向かいに座る
12: ◆WXIE0KHOPc[saga]
2019/06/11(火) 23:36:06.57 ID:17uvMvXx0
「向こうではちゃんと食べてるのか?」
「うん。寮のご飯はおいしいし、よくお友達が手料理を作ってくれるの」
そんな他愛のない会話ひとつひとつが嬉しい
13: ◆WXIE0KHOPc[saga]
2019/06/11(火) 23:37:22.75 ID:17uvMvXx0
「ときどきみんなでお料理したり、お菓子作りしたり。それにね、お菓子を作ったときはいっしょにコーヒーを淹れてくれる子もいるの。私と同い年なのにすごいよね──お母さん、どうしたの?」
「ううん。智絵里がそんな風に話すなんて、お母さんちょっと驚いちゃって」
「あっその、ごめんなさい……」
14: ◆WXIE0KHOPc[saga]
2019/06/11(火) 23:38:46.13 ID:17uvMvXx0
「お母さん、もうひとつ準備したものがあるの。ちょっと待ってて」
そう言ってお母さんが席を立つ
リビングにはお父さんと私、ふたりきり
勇気を出して声をかける
15: ◆WXIE0KHOPc[saga]
2019/06/11(火) 23:44:52.00 ID:17uvMvXx0
「お父さん……これ」
スクラップブックをそっと差し出してみる
お父さんの様子は変わらない
16: ◆WXIE0KHOPc[saga]
2019/06/11(火) 23:54:37.14 ID:17uvMvXx0
「智絵里、お誕生日おめでとう」
大皿を持ってお母さんがリビングに戻ってきた
あれ……この香り……
「バナナケーキなんて本当に久しぶりだったから美味しく作れているかわからないけれど」
17: ◆WXIE0KHOPc[saga]
2019/06/12(水) 00:03:17.99 ID:LuSwVSg00
「やっぱりケーキ屋さんのケーキのほうがよかったかしら」
「ううん。違うの……嬉しくて」
視界が滲んで全身が熱い
18: ◆WXIE0KHOPc[saga]
2019/06/12(水) 00:15:04.37 ID:LuSwVSg00
「あのね、お母さん」
「なあに」
「よかったら、お母さんの料理のレシピを教えてほしいな」
19: ◆WXIE0KHOPc[saga]
2019/06/12(水) 00:16:45.01 ID:LuSwVSg00
「そろそろ時間だな。駅まで送る準備をしてくるよ」
「もうちょっとゆっくりできたらよかったのにね」
「ごめんね。明日からまたお仕事だし、学校もあるから」
20: ◆WXIE0KHOPc[saga]
2019/06/12(水) 00:18:59.71 ID:LuSwVSg00
以上で終わりとなります。
2年前の大阪でのライブを思い返しながら書きました。
智絵里、誕生おめでとう。
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