8: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 20:20:31.72 ID:9pdDfgPfo
その場にいる全員が静まりかえった隙に、伊織はさっさとドアを開けて部屋へ入ってきてしまった。
「……エミリーも、いたのね」
それに気づいたエミリーは伊織から隠れるように俺の背中へ回り込む。やはり他のアイドルに知られるのは、いっそう気が引けるのだろうかと察した。
「ねえ、エミリー?」
「Ah...I...」
思わず反応したエミリーがハッと口を塞いだ。伊織は一瞬だけ目を見開き、
「……半信半疑だったけど……どうやら、冗談でもなさそうね」
ゆっくりとこちらに近づき、俺の体越しに話しかけた。
「Emily, I know the situation. He told me last night...then show me yourself.」
流暢な英語。エミリーはおそるおそる顔を覗かせ、伊織を申し訳なさげに見つめた。
「It must have been very hard...Tell me anything I can do for you.」
とたんにエミリーは一瞬息を詰まらせ、それから堰を切ったようにわんわん泣き出した。
伊織は困ったような、痛ましそうな、憐れむようなそんな表情でただ黙ってエミリーを抱きしめてやった。
言葉が通じなくなってしまってから初めてまともにコミュニケーションがとれる仲間を見つけてようやく安心したのか、
肩に頭を預けて長い間大粒の涙を流し続け、最後には疲れて眠ってしまったエミリーをソファに寝かせてからも、伊織はずっとそばにいて頭を優しく撫で続けた。
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