エミリーが忘れた日
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74: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 23:04:36.44 ID:9pdDfgPfo
 
「《最後にひとつだけ聞かせて》」

俯いているエミリーに向かって、私は構わず続けた。

「《あんたは、アイドルが嫌になっちゃったの? 765プロにはもういたくないの?
 一緒に頑張ってきたみんなとの思い出や、アイドルの楽しさも全部忘れちゃったって言うの?》」
「…………」
「《大和撫子を忘れた今……日本で過ごしてきた思い出なんて、エミリーには何の価値もないってことなの!?》」

ずっとずっと黙ったままさらに深く下を向くエミリーの次の言葉を待っているうちに、私は気がついた。
座り込んでいるエミリーが両手でぎゅっと握りつぶしたスカートの皺になっている部分に──滴が落ちていた。
顔を横から覗くと、エミリーはくしゃりと顔を歪ませながら、

「《そんなわけ、ありません……!》」

まるで震えているみたいに、小さく首を横に振った。

「《エミリー……?》」
「《みなさんのことが大好きです……! 離れたくありません……! 本当はアイドル、もっとやりたかった……っ……!》」

ここにきてようやく本音を漏らしてくれたことに驚き──我に返って、私はエミリーの両肩を掴んだ。

「《だったら……だったら、何で辞めるなんて言ったのよ!》」
「《だってっ……! こんな状態で居座っても、きっと迷惑にしかならないから……!
 私は、みんなが、元気で、一生懸命に、毎日頑張ってる姿が好きなのに……
 こんな私がいたら、きっとみんながっ……気を遣って……私なんか、邪魔にしかならないんです……!》」
「《そんなわけないじゃない。 みんなあんたの為に協力してくれる……》」
「《私が嫌なんです……! そんな状態で、みんなに負担なんてかけたくないんです……! 私が苦しいんです……っ……! 》」
「《エミリー……》」
「《どうすればいいか分かれば……私だけ、こんなに辛い思いしなくていいはずなのにっ……!》」

何と返せばいいのか分からなくなってしまう。エミリーは溢れてくる涙を手のひらで乱暴に拭いながら小さく嗚咽を漏らし続けた。


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