50: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 22:36:01.79 ID:9pdDfgPfo
エミリーを気にかけていた他のメンバーを一旦外させ、俺と伊織の三人だけでリハをやってみる。
「エミリー、歌えるか? 歌詞、覚えてる?」
「…………ダイジョウブ……と、おもいます」
ゆっくりと尋ねると、日本語で答えてくれた。しかし言葉ではそう言うが、明らかに何か心配を含んだ表情。
「《何か不安でもあるの?》」
隣の伊織が問うと、エミリーは何と言って良いのか分からないかのように黙りこくる。
「難しいと思ったら途中で止めてもいいから。 無理はするなよ」
コクリと頷いてステージに上がり、はじめは迷子のようにしばらくポツリと立ち尽くしていたが、
少しずつ風景に慣れてきたのか、深呼吸をして「おねがい、します」とだけ言った。
「……じゃ、流すぞ」
スタッフに指示をして、曲を再生してもらう。
♪ぽつり ぽつり 雨音が 水たまりではしゃげば……♪
エミリーの歌声にははっきり言って感情が篭っていなかった。
振り付けにも特に間違いはないが、いつもの繊細で柔らかい動きはどこへやら、探りながら踊っているようでたどたどしい。
表情も固く、笑顔一つも見せない。
しかし、きちんと歌えている。
発音に少々難のあるものの歌詞忘れもなく順調に進んでいるように見える。
なのに一体エミリーは何を思ってあそこまで無気力なのか。
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