エミリーが忘れた日
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40: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 22:21:55.96 ID:9pdDfgPfo
 
咄嗟にたじろいだもののだんだんと理解の追いついてきたエミリーは、振り返って歩を見た。

「──ま、ズバリ“765プロ英会話教室”ってとこかな」
「なるほど。 そんなことをやってたのか」
「《エミリーばっかり苦労させるのも悪いと思って》」
「《みなさん……》」

エミリーはまた複雑そうにポロリとこぼした。
誕生日メッセージなどに使われるいつものホワイトボードには、“授業”の痕跡がびっしりと残っている。

「プロデューサーさん、歩さんってとってもすごいんです! 私たちに英会話を教えるの、本当にお上手でした!」
「あのね、おやぶん! みんなで勉強して、エミリーとお話できるようにがんばってるんだ! えらい? えらい!?」
「私も、英語初めて習ったけどすっごく楽しいよ!」

俺には嬉しそうにそう伝えてくれるものの、星梨花も環も育も、エミリー本人が現れて今更ながら少し緊張しているようだ。
ひなたが一歩踏み出して、いよいよエミリーに話しかけた。

「エミリーちゃん」

エミリーは黙って待っている。

「えーっと、ありゃ、なんちゅうんだっけかなぁ……エミリーちゃん、ハウ・アー・ユー・ドゥーイン? ……う〜ん、やっぱし難しいべさ」

ひなたの舌足らずな英語はなんというか、幼い子供の覚えたてのようで微笑ましい。
エミリーは周りに迷惑がかかることを一番嫌がっていたし──当然誰も迷惑だなどと思っていないが──
みんなの気遣いが、本人にはもしかしたら純粋に喜べないことなのかもしれない。
ただ言葉だけではないものがきちんと伝わったようで、エミリーは不安そうなひなたにニッコリ笑いかけてみせた。

「I'm fine. Thank you.」

聞き取れるようにゆっくり、はっきり、簡単な言葉で返事をしていく。


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