38: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 22:19:23.99 ID:9pdDfgPfo
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別の日、エミリーを最初に診てもらった病院で改めて脳の検査をしてもらったが、やはり目立った異常はないらしい。
現状報告もかねて挨拶へ向かうと、先生は「いい傾向のようですね」と安心した様子だった。
「できるだけ元の生活と同じ環境におけば回復は早くなるかも」というアドバイスを受けた。
“学習”の経過を鑑みるに、今のエミリーならば外部からの刺激を少しずつ増やしても良さそうという判断だ。
エミリー自身からも希望があったので、その足で二人揃って劇場へ向かう。
まだ伊織抜きでろくに会話は出来ないが、運転の合間に覗いてみた助手席のエミリーの表情からはどこか安らかさがうかがえる。
驚かないことの方が少ない日々。だがいい方向に向かっている実感を持てればいくらか救いもあるというものだ。
閉め切った車内で少し暑そうにしていたようなので窓を開け風を入れてやると、
ツインテールがはしゃぐように舞い、エミリーは気持ち良さそうに目を閉じる。
「アリガトウ、ゴザイマス」
一息ついた後、エミリーは俺に向かって言った。こちらが驚いていると今度は恥ずかしげに笑っている。
「上手だよ」と返してみると、もう一際明るい笑顔が咲いた。
劇場公演はすっかり青羽さんやその他のスタッフに任せっきりにしてしまっていた。
毎日立ち寄りこそするが、滞在時間があまりに短いためしばらく顔を合わせていないアイドルも多い。
社長からの指示でしばらくはエミリーの面倒に専念するよう言われていたものの、上手くやっているだろうかやはり心配になる。
おそらく誰もが大なり小なりエミリーのことを気にかけてくれていると思うし、それ自体はありがたいことだ。
だがみんなにはこういうときだからこそ仕事に専念してもらいたい。
必要以上に不安を持たせないようにという意味も合わせて、今日はサプライズでエミリーとの交流を楽しんでもらうことにする。
伊織は別の仕事で今日一日は一緒にいられないものの、もう一人頼りになりそうなアイドルがいる。
アメリカでのダンス留学経験のある舞浜歩だ。
事前に連絡を取っておいたところ、威勢よく「任せて!」とのことだったのでここは素直に甘えることにした。
劇場前に着くと、歩はすでに玄関前で待ち構えていた。
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