3: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 20:06:27.55 ID:9pdDfgPfo
「エミリー、すまなかった。 俺が劇場にいて監督できていれば防げたかもしれないのに……」
しゃがみ込んで彼女に目線を合わせ、ゆっくり話しかけていく。
彼女は俺の目を見つめながら、ブンブンと首を横に振った。
「先生がもう大丈夫だって。 ほら、今日の所は帰ろう」
手を差し出してみるも、彼女は頑なにそこを動こうとせず、ただただ首を振り続けていた。
「仕事のことは心配するな、大事を取ってしばらく休みにするから……エミリー?」
ここでようやく、さすがに様子がおかしいことに気がついた。
エミリーはひたすらに、こちらに何かを訴えるような目つきを変えなかった。
はっきりと、その奥に恐怖とかおびえじみた感情が映り込んでいる。
「あの……彼女、話せるんですか?」
「何ですって?」
先生が横から挟んだ言葉がすぐには理解できず──それを飲み込んで、まさか、と背筋が凍る。
「……エミリー? 何があったんだ? 教えてくれ! エミリー!?」
思わず細い両腕を掴み食ってかかると、彼女は体を強張らせうずくまる。しまった、と離れた瞬間、ようやくエミリーは絞り出すように声を発した。
ボロボロに弱りきった、掠れるような声で、俺の想像を絶する一言を。
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