エミリーが忘れた日
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14: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 20:30:41.28 ID:9pdDfgPfo
 
「お客さんにも聞いてみましょうか?」

ヒョイヒョイ、と莉緒がエミリーを手招きし、

「《やっぱり、エミリーがいないといい歌にならないんですって》」

やってきた彼女に伊織が説明してみせる。

「…………」
「……エミリー?」
「Sorry...」

エミリーは拳をきゅっと握り、無理やりな小さい笑顔を何とかこちらへ見せたかと思えば、

「《曲も振り付けも頭にあるんです。 なのに、本当は歌えるはずの歌詞の意味が分からなくて……なんだか、自分の歌じゃないみたいです》」

それだけ言って下を向いてしまった。
その彼女にかけられるような気の利いた言葉を、誰も見つけられない。

「……ごめんなさいね。 無責任かもしれないけど……きっといつか戻るわよ。 私は信じてるから」

悔しさを噛み潰して空元気を少し混ぜ、律子が呟いた。
伊織が何も言わなかったからか、エミリーからの反応はなかった。



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