51: ◆RZFwc/0Dpg[sage saga]
2019/05/31(金) 22:47:36.66 ID:kcSV+mvpO
しばらくそのままでいると、周子が肩を寄せてくる感触が、腕を通じて伝わってきた。
彼女の動きは夏にじゃれついてきた時のそれと比べるとより柔らかく、そしてより優しいものだった。
52: ◆RZFwc/0Dpg[sage saga]
2019/05/31(金) 22:48:22.76 ID:kcSV+mvpO
静かな声で周子が語りかけてくる。
「Pさんのその苦しさ、あたしはきっと分かってあげられない。だって……あたしはアイドルだから」
53: ◆RZFwc/0Dpg[sage saga]
2019/05/31(金) 22:48:58.52 ID:kcSV+mvpO
目を開くと、周子は温かく微笑んでいた。それから俺の腿を左手でピシャリとはたいて言う。
「さーて。Pさんの足腰もしっかりしてきたようだし、そろそろ帰ろっか」
54: ◆RZFwc/0Dpg[sage saga]
2019/05/31(金) 22:49:34.79 ID:kcSV+mvpO
真面目に話していたかと思えば、急にこんな訳の分からない会話を始めて。
気が塞いでいたはずなのに、俺は思わずくすりと笑ってしまった。
目をやると周子も、隣でニヤニヤ笑っている。
55: ◆RZFwc/0Dpg[sage saga]
2019/05/31(金) 22:50:21.28 ID:kcSV+mvpO
「……Pさんがまだ帰りたくない気分なら、何処でも付き合うけど?」
こちらをさりげなく気遣うように周子がそう言ったので、俺は肩をすくめておどける。
56: ◆RZFwc/0Dpg[sage saga]
2019/05/31(金) 22:51:09.31 ID:kcSV+mvpO
一瞬、時間が止まったように感じた。
真意が分からず、俺は思わず訊ね返す。
57: ◆RZFwc/0Dpg[sage saga]
2019/05/31(金) 22:51:54.29 ID:kcSV+mvpO
周子の目を見る。
彼女の瞳は熱を帯びていて。そしてまた、湿っているようにも思えた。
58: ◆RZFwc/0Dpg[sage saga]
2019/05/31(金) 22:52:31.66 ID:kcSV+mvpO
一度深呼吸をして、俺は口を開く。
「……あのさ、周子」
59: ◆RZFwc/0Dpg[sage saga]
2019/05/31(金) 22:53:02.55 ID:kcSV+mvpO
あれ、待て。
俺は今……何て言った?
自分の口の動きが信じられず、咄嗟に周子の顔を眺める。
60: ◆RZFwc/0Dpg[sage saga]
2019/05/31(金) 22:53:34.17 ID:kcSV+mvpO
「わ、笑うな。おい」
情けなさの余り、片手で顔を覆い隠しながら周子に言う。
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