90:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 11:46:25.19 ID:YWfCY9A20
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その文字だけは見間違えるはずがなかった。
始業前の定時制の教室。西の彼方に沈みゆく太陽の濃い色をした光が弱く射し込む教室の机の上。自分が書いたメッセージの左隣に並ぶ、ぴょんと跳ねるような文字。
――さーや? これ書いてるのって……さーや、だよね……?
それはいつも色んな歌詞を書いてくれて、そして、ひとりで抱え込んでいた昔の私を引っ張ってくれた、香澄の文字だ。
およそひと月振りに見る親友からのメッセージは、沙綾の胸を詰まらせるのに十分すぎる力を持っていた。にわかに視界が滲みそうになって、沙綾は一度キュッと目を強く閉じてから開く。そしてその文字に目を通す。
――やっぱり有咲の言う通りになってたんだ! 大丈夫? 元気にしてる? 怪我とかしてない? こっちは大丈夫だよ、みんないつも通りで……ううん、いつも通りじゃ、ないんだった。
教師が教室に入ってくる。もどかしい気持ちを抑えながら、号令に従って立ち上がり、頭を下げる。それからスクワットの回数を競っているみたいに慌ただしい動きで椅子に座って、続きを読んでいく。
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