2:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 10:33:32.33 ID:YWfCY9A20
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気が付くと彼女は電車の長椅子に座っていた。
ガタンゴトンと、車両がレールのつなぎ目を超える音。それ以外に音はしない。窓の外からは眩いばかりの白い光が射しこんできていた。そのせいで外の風景は見えない。
視線を左右に巡らせる。車内には彼女の他に人の姿がない。
ガタンゴトン。
幾度目かのその音を耳にしながら、彼女は考える。はて、どうして私は電車に乗っているんだろうか。
学校へ行くため? いや、学校へは電車は使わない。
じゃあどこかへ出かけるため? いや、そんな用事があっただろうか。
そもそも、自分はいつ、どうやってこの電車に乗ったのか。それをまるで覚えていない。
人のいない車両。まるでこの車内だけで世界が切り取られてしまったかのような空間。
ふと、彼女は自分の対面の長椅子に人影が現れたことに気付く。
窓からは変わらず白い光が射している。対面の人物も逆光になっているから、その姿は見えづらかった。
眩い光に負けないように、目を凝らしてみる。あちらもそうしているのだろうか、逆光の黒い影がやや前かがみになっていた。
――もう少し、もう少しで見えそう。
そう思ったところで、フッと白い光の中にその人物の姿がくっきりと浮かんだ。彼女はそれに驚いた。
電車の長椅子。その対面には、まるで鏡を見ているかのように、自分の驚いた姿があった。
え、なにこれ。
思わず口から呟きが漏れたところで、彼女の視界はブラックアウトした。
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