55:名無しNIPPER
2019/05/24(金) 22:40:08.88 ID:ERzHuNUU0
私の言葉に、少し目が泳いだ気がする。表面上は動揺していないけど、少し驚いているみたい。
「……一応、理由を聞こうか」
「いやー、あのー……別に無理にとは言いませんけど……あ、そうだ! ルーティーンですよルーティーン! 一流のスポーツ選手はそういうの大事にしてるじゃないですか!」
56:名無しNIPPER
2019/05/24(金) 22:40:44.34 ID:ERzHuNUU0
「ま、いいよ。ほら、自由にしたらいい」
プロデューサーさんは私と同じように両腕を前方へ広げた。思わぬ返答に私はドギマギした。
でも本人がそういうなら……!
57:名無しNIPPER
2019/05/24(金) 22:41:12.58 ID:ERzHuNUU0
私の恋は、思った以上にワガママだ。
「オーディション、不安なんだよな」
そうじゃないけど、そういうことにしておこう。それが一番都合がいいから。
58:名無しNIPPER
2019/05/24(金) 22:41:39.13 ID:ERzHuNUU0
「プロデューサーさんは、私のチョコレートですね!」
59:名無しNIPPER
2019/05/24(金) 22:42:10.45 ID:ERzHuNUU0
不思議な力が私に宿ったように、魔法のように、言葉が出てきた。私は驚いて、でも自分の意思なんだろうなと納得した。
「え? それってどういう……」
「なんでもないです! そうだ、プロデューサーさん」
60:名無しNIPPER
2019/05/24(金) 22:42:41.42 ID:ERzHuNUU0
私は得意の笑顔を、褒めてくれた笑顔をとびっきりに彼への思いを表現して、背中を見せてステージへと駆けていく。
心臓が飛び跳ねる。ドクンドクンと耳にまで届いて鼓膜を揺らす。多分プロデューサーさんは分かってない。だから安心した。けど、いつか私の恋が彼に伝わる時が来る。
私のやり方で、私の言葉で伝えられたからこれでいいんだ!
61:名無しNIPPER
2019/05/24(金) 22:43:08.29 ID:ERzHuNUU0
アイドルになりたての頃、オーディションが怖かった。私より個性的な人がいた、私より可愛いと思う人がいた、私よりダンスが得意な人がいた、私より歌が上手い人がいた。
だから私は埋もれるんじゃないかなって思った。でも、その不安をすぐに察知して、プロデューサーさんはただ黙ってチョコをくれた。お前はチョコアイドルだろう? チョコを食べて緊張をほぐせ、と言ってくれたような気がした。普通の市販のチョコだったけど、今まで食べたものよりすごくおいしかった。
そうか、私は他の人を気にする必要なんてないんだって。
62:名無しNIPPER
2019/05/24(金) 22:43:35.94 ID:ERzHuNUU0
でも、今日のチョコはとてつもなく甘かった。いつもと一緒のはずなのに、なぜか……甘い。
甘くて甘くてしょうがない。
私はチョコとは違う甘さを知ったんだ。
63:名無しNIPPER
2019/05/24(金) 22:44:28.15 ID:ERzHuNUU0
プロデューサーさん。
私は私らしくこれからもチョコアイドルとして、あなたにずっと見てもらえるように頑張ります。私自身が見出した道、あなたが背中を押してくれたから。
同じ目線じゃなくても、隣でおんなじ場所を眺めていたい。
64:名無しNIPPER
2019/05/24(金) 22:48:28.91 ID:ERzHuNUU0
約15000文字ほどのSSでした。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
朝コミュでのエピソード(サインの練習とか〜)やオーディション前コミュ(チョコ食べる〜)などを少し想像して膨らませて織り交ぜてみました。いかがでした?
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