51:名無しNIPPER
2019/05/24(金) 22:37:46.81 ID:ERzHuNUU0
でも今凛世ちゃんの言葉を、感情を、優しさを。それらを聞いて私も好きでいいんだ、好きでいていいんだ、って思って心が晴れた。眩しい太陽が雲の切れ間から覗き始めたようにぽかぽかとチョコの牢獄を溶かす。
「凛世ちゃんありがとう」
私は私自身の言葉で恋を紡げるような気がする。
52:名無しNIPPER
2019/05/24(金) 22:38:25.23 ID:ERzHuNUU0
紡ごう。私の言葉で。唱えよう。私の恋を。
チョコレートのように甘い恋をしてみたい。私の甘い欲望をみんなに、そしてーーに伝えたい。
たとえ夏葉ちゃんみたく堂々とできなくとも。
53:名無しNIPPER
2019/05/24(金) 22:38:53.06 ID:ERzHuNUU0
◆◆◆
オーディションの日には、いつもプロデューサーさんがいてくれる。
「準備は大丈夫そうだな。智代子ならできるからな」
54:名無しNIPPER
2019/05/24(金) 22:39:33.96 ID:ERzHuNUU0
「プロデューサーさん、少しお願いがあります」
「……? どうしたんだ、急に改まって」
ドキドキが止まらない。顔が熱い。全身の血液が燃えたぎっているよう。
55:名無しNIPPER
2019/05/24(金) 22:40:08.88 ID:ERzHuNUU0
私の言葉に、少し目が泳いだ気がする。表面上は動揺していないけど、少し驚いているみたい。
「……一応、理由を聞こうか」
「いやー、あのー……別に無理にとは言いませんけど……あ、そうだ! ルーティーンですよルーティーン! 一流のスポーツ選手はそういうの大事にしてるじゃないですか!」
56:名無しNIPPER
2019/05/24(金) 22:40:44.34 ID:ERzHuNUU0
「ま、いいよ。ほら、自由にしたらいい」
プロデューサーさんは私と同じように両腕を前方へ広げた。思わぬ返答に私はドギマギした。
でも本人がそういうなら……!
57:名無しNIPPER
2019/05/24(金) 22:41:12.58 ID:ERzHuNUU0
私の恋は、思った以上にワガママだ。
「オーディション、不安なんだよな」
そうじゃないけど、そういうことにしておこう。それが一番都合がいいから。
58:名無しNIPPER
2019/05/24(金) 22:41:39.13 ID:ERzHuNUU0
「プロデューサーさんは、私のチョコレートですね!」
59:名無しNIPPER
2019/05/24(金) 22:42:10.45 ID:ERzHuNUU0
不思議な力が私に宿ったように、魔法のように、言葉が出てきた。私は驚いて、でも自分の意思なんだろうなと納得した。
「え? それってどういう……」
「なんでもないです! そうだ、プロデューサーさん」
60:名無しNIPPER
2019/05/24(金) 22:42:41.42 ID:ERzHuNUU0
私は得意の笑顔を、褒めてくれた笑顔をとびっきりに彼への思いを表現して、背中を見せてステージへと駆けていく。
心臓が飛び跳ねる。ドクンドクンと耳にまで届いて鼓膜を揺らす。多分プロデューサーさんは分かってない。だから安心した。けど、いつか私の恋が彼に伝わる時が来る。
私のやり方で、私の言葉で伝えられたからこれでいいんだ!
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