7: ◆uLYDn.hAKU[saga]
2019/05/20(月) 11:01:11.02 ID:tZfbkx5BO
不意に、二十時間前のある光景が目に浮かぶ。投光器に照らされた埠頭。あまりの明るさに彼女の目元にうっすら浮いたしわまで見えた。夕立はこちらを向いて佇む。緊張した空気の中で彼女だけバツが悪そうに笑っていた。長い亜麻色の髪はつやがなく、まともな化粧は望むべくもなかったがそれを意識させないほどには彼女の顔立ちは綺麗だった。
我に返り、脳裏の光景をかき消す。思考がとりとめなくなっているだけだ。
「提督さん、聞いてる?」
「うん。聞いてる」
ぼんやりした頭のまま返す。気付けば絞られた照明の中で彼女の顔を正眼に見ていた。
もう帰ろう。これ以上いたら本当によくない考えがはっきり胸中に顕れそうだった。
マネークリップから適当な札を二枚引き抜いて夕立の手元に置いた。
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