2:名無しNIPPER[saga]
2019/05/08(水) 18:15:58.74 ID:ED3vW4kA0
パソコンの前に置いたキーボードのHキーを人差し指で大げさに叩いた僕だが、どうやらその指に力を入れ過ぎてしまったようでじんじんと骨が痛むような感覚を覚えながら、机を挟んで対面している新田美波に目を向けた。
「実は私、サキュバスなんです」
今日に限って同僚の千川ちひろさんが休んでいて僕しかいなかった事務所にやって来るや否やそんなことをのたまう彼女に、普段であれば気でも違ったかなと思っていたであろう僕だが、何だか彼女の着ている衣装が大変なことになっていたので思わず席を立って彼女の横に移動する。
「どういうことか分からないな。イベントも無いのに、コスプレをしに来たのかな?」
なぜ僕がわざわざ席を立ったかというと、彼女の外見を見てしまい下半身に気が集約してしまって座るのが苦しくなったとか、机を挟んで座っていると彼女の腰から下部分がどうなっているのかが確認できないとか、そういう事情はこれっぽちも無くて、彼女から感じる艶めかしい気に押されぬよう己を奮い立たせ平静を装う為に立ち上がったのだ。
僕と向かい合って、彼女の表情はその衣装を合わせて妖しい様を見せていた。そもそも事務所に角を生やしてやってくるアイドルなんでもちろん常識的ではないし、上着のファスナーは限界近くまで下ろされておっぱいの大事な部分が見えてしまいそうなくらい開放的になっているし、背中に生えている羽や尻尾は満員電車に乗ってるときは邪魔で仕方がないんじゃないかと思う。
「コスプレじゃありませんよ。今まで隠していたんですけど……ほら、この羽だってちゃんと飛べるんですよ?」
そんなことを言いながら彼女の体が床から数十センチ浮き上がったことに、僕は内心顎が外れる思いだったがやはり平静を装った。それから彼女の背中越しに見えるツヤツヤとした尻尾が、何も隠す気がなさそうなスカートの後ろを持ち上げた。
僕は内心リモコン操作にでも失敗したのかなと思い、ほくそ笑んで失敗を突いて精神的に優位に立とうと思ったのだが、とんでもないことに彼女はその場でゆっくりと回り始めたのだ。しかも背中を向けたときに、これでもかと言わんばかりに尻尾で捲れたスカートから丸見えのお尻を突き出して見せつけたのだ。
「何をやっているんだい? アイドルがそんなことをしていいと思っているのか?」
つい最近、僕はネット配信されていた古いアニメを偶然見かけた。そのアニメは、聖なる獣を従えて知に長け武に優れ、光の鎧を身に纏った勇者が巨悪を打ち倒すというロボットアニメだ。
そして今まさに僕の目の前には、性なる獣が痴に長け臀部が優れ、艶めかしい衣装を身に纏ったサキュバスがいる。そうだ、新田美波はサキュバスなんだ。これまで隠されていた真実に、そう確信するしかなかった。その確信が、更に彼女の姿を艶めかしく見せているようだった。
「いいんですよ、私はサキュバスなんですから」
「それじゃあ、サキュバスが何をしに来たんだ。新しい仕事が無いか、催促にでも来たのかな?」
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