82:名無しNIPPER[saga]
2019/04/29(月) 00:16:04.50 ID:SYS+AFC90
「家出……あるよ。ずっと小さかった頃に、一度だけ」
プロデューサーは、鼻で一つため息をついた。
「といっても、隣町の公園まで歩くのがやっとだった。
スーパーでパンを買って、泣きながら食ってたら、じきに親が迎えに来てな……って、そんなの今はどうだっていいだろ」
「最後まで見つからないようにする家出って、あり得ると思う?」
あたしは、プロデューサーの顔をジッと見つめた。
すごくヘンだけど、まるで自分自身を見ているような感覚にふと襲われた。
見つけてほしくない失踪がそこにある――だけどそれは、あたしが見つけちゃいけない理由にはなり得ない。
「夕美ちゃんを探してくる」
「おい、ちょっと待て。どこへ行く気だ!」
「だから夕美ちゃんのトコ。それとも、失踪するって言った方が分かりやすい?」
ここにいないのなら、夕美ちゃんのルーツに行こう。
あたしは部屋を出た。
神奈川の場所は分かっている。東京の南だ。
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