【シャニマスSS】冬優子「それは」灯織「あったかもしれない邂逅」
1- 20
6: ◆/rHuADhITI[saga]
2019/04/07(日) 17:43:44.12 ID:khuu0cd90
「……いいですね、あれ」

 そんな言葉が口をついた。

「ふゆも、そう思います」

 彼女も再び、その広告に目を向けている。二人で同じものを見ていた。それから数秒ほどで画面が切り替わり、二人とも同時に前方へと視線を返す。

「お好きなんですか?」

 私が問う。目的語はぼかした。図らずも自分の立場を隠している状況で、『アイドルが好きなんですか』と聞くのは、下卑た感じがして嫌だったのだ。

「好きですよ。アイドルって可愛くて、かっこよくて、キラキラしてて……ふゆも女の子ですから、やっぱり憧れちゃいます」

 しみじみと彼女が言う。

 そこに正面からサラリーマンが通りがかったので、二人で道のはじに寄って小さくなる。肩がわずかに触れ合って、すぐにまた離れた。

「メガネさんも好きなんですか、アイドル」

「……はい、大好きです。憧れの人もいるんですよ」

 中学の時に出会った人を思い出して、言葉にする。その人が私のアイドルとしての原点であるのは間違いない。太陽みたいに眩しい笑顔を持っている人で、私はずっとその笑顔に焦がれていた。

「ふふっ。メガネさん、今日で一番生き生きしてますね」

「そ、そうでしょうか……?」

「はい。文句なしに、です」

 顔が熱くなる。へんてこな自慢話をしてしまったような気分になって、私は腕を所在なさげにふらふらとさせた後、胸の前でがっちりと組んだ。まだ熱い。

 そして、熱を感じていたからこそ、私は温度差……彼女の表情の、冷たい陰りを見逃せなかった。



<<前のレス[*]次のレス[#]>>
27Res/32.06 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice