【わたモテ】むしゃぶりつくうちもこ
1- 20
4: ◆2DegdJBwqI[saga]
2019/03/14(木) 03:27:27.58 ID:6J0cTy0so

 彼女は往来で行き過ぎる有象無象《うぞうむぞう》には目もくれず、ほんの一メートルほど先の地面、灰色のコンクリートが描く単調でつまらないタイル模様を凝視《ぎょうし》している。

 その頭の中では、刻々と数字が積み上げられている。

 いちまんごひゃくさんじゅういち。いちまんごひゃくさんじゅうに。いちまんごひゃくさんじゅうさん。

 一ずつ積み上げられるそれらの数字は、彼女が余計なことを考えてしまわないように注意を逸らしてくれるおまじないだった。

 何が余計なことかは彼女自身にもよくわからなかった。

 しかし、ひとたび気を抜けば取り込まれてしまいそうになるわけのわからない大きな切迫感があった。

 切迫感は、マスク越しに吸い込んだ朝の冷たさと混ざって、固体のフリをして、彼女のお腹の中で凝《こご》っていた。



<<前のレス[*]次のレス[#]>>
110Res/53.76 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice