369: ◆hs5MwVGbLE[saga]
2019/10/01(火) 17:05:38.49 ID:htj7Q5Kz0
ただ一人宿屋の壁に背もたれた愛栗子はじっと夜空に浮かぶ月を眺めていた。
灯りなしの空下は夜目慣れなければただ闇だけが広がり続ける場所。それが幾らかの星々を目立たせ、月にいたってはまるで千両役者のようである。
千両役者となれば愛栗子であろうと誰であろうと目を引かれるのは当然のこと……そこに別物の光割り込むことなき限りは。
こがね色の千両役者から愛栗子の目を逸らさせたのは足音でも人影でもなくまずは大きな橙の灯りだった。
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