4: ◆Hnf2jpSB.k[saga sage]
2019/03/02(土) 20:52:01.44 ID:fEWrCF9Y0
初めて会ったのは、確か十年くらい前の夏休みだったと思います。
家族みんなで帰省して、そこには伯父さんの家族も来ていて。
お嫁さんの連れ子だとかで、血のつながりはないのですが。
当時はそんなことはよく分かっていませんでした。
5: ◆Hnf2jpSB.k[saga sage]
2019/03/02(土) 20:52:52.93 ID:fEWrCF9Y0
「好きなカードを一枚、心の中で選んでくれるかな?」
最初の緊張はどこに行ってしまったのでしょうか。
いつの間にか、私の胸はワクワクでいっぱいになっていました。
6: ◆Hnf2jpSB.k[saga sage]
2019/03/02(土) 20:53:57.19 ID:fEWrCF9Y0
「すごい……なんで分かったの?」
「顔に書いてあったからね」
7: ◆Hnf2jpSB.k[saga sage]
2019/03/02(土) 20:54:42.91 ID:fEWrCF9Y0
「嘘じゃないよ」
咄嗟に出た私の言葉に、柔らかい声が返ってきました。
8: ◆Hnf2jpSB.k[saga sage]
2019/03/02(土) 20:55:46.44 ID:fEWrCF9Y0
こんな風に言われたのは、初めてのことです。
周りのみんなとは正反対の言葉。
でも、本当に本当なんでしょうか。
どう受け止めればいいんでしょうか。
9: ◆Hnf2jpSB.k[saga sage]
2019/03/02(土) 20:56:37.74 ID:fEWrCF9Y0
「でもね」
ふっと、お兄さんの声が真剣なものに変わります。
視線を上げると、そこには真っ直ぐな目。
10: ◆Hnf2jpSB.k[saga sage]
2019/03/02(土) 20:58:00.49 ID:fEWrCF9Y0
私が、私を……?
何を考えているのか分からないと言われる自分。
気持ちをちゃんと表現できない自分。
11: ◆Hnf2jpSB.k[saga sage]
2019/03/02(土) 20:58:57.00 ID:fEWrCF9Y0
「というわけで瑞希ちゃん。カードマジックを教えてあげるよ」
にこやかに笑って、お兄さんは言いました。
12: ◆Hnf2jpSB.k[saga sage]
2019/03/02(土) 20:59:46.01 ID:fEWrCF9Y0
「手品に必要な才能って、なんだと思う?」
黙ったままの私に、質問が飛んできました。
13: ◆Hnf2jpSB.k[saga sage]
2019/03/02(土) 21:00:44.24 ID:fEWrCF9Y0
「一番大事なのは、タネを見破られないことだよ」
トランプの動きに目を奪われている私に、そう言いました。
14: ◆Hnf2jpSB.k[saga sage]
2019/03/02(土) 21:01:52.62 ID:fEWrCF9Y0
「だから、僕よりも瑞希ちゃんの方が手品に向いてると思うよ」
「……え?」
38Res/25.20 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20