梨子ちゃんとマルの平穏な日々
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170: ◆QjbAJuMwBnbV[sage saga]
2019/07/24(水) 22:10:50.03 ID:JzGIH7Dh0
5.5

道端の紫野菊にふと目を引かれる、梅雨も迫ったある日の放課後
私はいつもより不安な気持ちでそのドアを開いた

ガラララ

いつもは意識もしないドアを引く音が
やけに大きく、廊下中に響き渡っている様な気がして
まるで授業中に不意に大きな音を立ててしまった時のような焦りを感じた

一つ深呼吸をして、気を落ち着かせる

ドアを開ける前から感じていた静寂
室内を見渡したら、すぐにその理由が分かった

そこにいたのは、1年生のあの子
国木田花丸ちゃん
とても友達思いな文学少女
歌も上手

その彼女が、部室に一人きりで、口を半開きにして
こちらを凝視したまま硬直していた…

その表情からは、はっきりと緊張の色が窺える
いや、むしろ怯えていると言った方がいいかもしれない
そんな花丸ちゃんの様子を見て
私は正直少し…いや、結構ショックを受けました
ただそのショックのおかげか、さっきまで感じていた緊張感はすっと消え去って

梨子「あ、花丸ちゃん。早いね…一人?」

そう自然な調子と笑顔で話しかけることができました

私の問いかけに
数度の瞬きの後、花丸ちゃんはやっとこちらの世界へ戻って来たかのように硬直を解いて

花丸「あ…はい。ルビィちゃんと善子ちゃんはおうちの用事でお休みするって…」

と、一人きりで部室にいる理由を語ってくれた

梨子「そうなんだ…実は千歌ちゃんと曜ちゃんも今日は来られないんだって」

私の方も、一人きりでこの部室に来たのはこれが初めて
きっと花丸ちゃんもさっきまでの私と同じように緊張してたんだろうなあ、と
そんな風に思いながら自分の事情を話し、花丸ちゃんの向かいに座りました


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