不死講
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9: ◆CItYBDS.l2[saga]
2019/02/22(金) 20:54:59.02 ID:Q3Zc+mWd0
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 はてさて、それでは時間を現在に戻してみよう。


「なくなった結婚指輪を探してほしいの」


頭の代わりに『電卓』が据わった美人からの依頼だ。何をもって美人と判断してるかって?言わせるなよ、体だよ。言っちゃったよ。
しかし、電卓でさえ結婚しているというのに僕の体たらくよ。
いったい僕の妻はいつになったら、僕の目の前に現れ、そして熱いキスを交わし、ギュッと抱きしめてくれるのだろうか。

いい加減待ちくたびれたぞ。
あの自称神様が、本当に僕の願いを適えてくれたのか大いに疑問だ。近いうちにでも、酒を集りに押しかけてみよう。


「でも、それはまた今度にしよう。仕事が入ったことだし今晩は景気づけに行こうかな」


「どこにいくのよ。どこかに行くなら私の問題を解決してからにしてくださる?」


電卓に釘をさされてしまった。そういうのってトンカチの仕事では?

つまるところ彼女の話を聞くに、依頼の内容はこうだ。
電卓夫人は結婚して早数年、新婚生活という甘い日常も過ぎ去り刺激を求めて夜の街へ繰り出していたところ。
夫が安月給をやりくりして、買い与えてくれた結婚指輪をどこかに忘れてきてしまった。そして、その結婚指輪を僕に探し出してくれというものだ。


「ちょっと!ちゃんと人の話を聞いてたの!?」


どうやら、違っていたようだ。
そもそも僕は、人の話を聞くことは慣れていても電卓の話を聞くのには慣れていないんだ。



「私の夫の、『結婚指輪』君が亡くなったの!遺体を探してほしいのよ」


ふむ。やはりこの世界は狂っている。
電卓夫人の話は実にわかりにくいものであったが、つまり結婚指輪を失くしたというわけでもなさそうだ。

今度こそ依頼内容を正確にまとめると、彼女『電卓夫人』の夫が『結婚指輪』君であり、その夫が亡くなったものの遺体がみつからない。
だから、亡骸を探偵である僕に探してほしい。
そういう話らしい。


 小学生のころ、僕は「将来の夢」の宿題に「シャーロック・ホームズになりたい」と書いた。
もちろん当時の僕は、ホームズがヤク中のイカレだとは知らなかったわけだけど。
今や僕は、その夢を適え探偵となっている。ただ残酷なことに、ホームズの代わりに世界がイカレてしまっていた。


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