不死講
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8: ◆CItYBDS.l2[saga]
2019/02/22(金) 20:54:31.60 ID:Q3Zc+mWd0
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 ある日突然目が覚めたら、そこは異世界だった。
果たして、インターネット上でどれだけの数の物語がその語り口で始まったことやら。うん断言しよう、間違いなく果てしない数であろうさ。
実際のところどうなんだろうね、世に溢れるニートの数と等しいぐらいあるんじゃないか。
一家に一台、一人のニート。
そのニートが、それぞれ一つだけ異世界転生の物語を夢想したと考えれば実に現実的な数字でなかろうか。

僕の物語も、そんな海千山千の一つにすぎない。

目が覚めると、知らないベッドで僕は寝ていた。
見慣れない部屋を恐る恐る進み、とりあえず顔を洗おうと洗面所にたどり着き鏡を覗くと。
そこには、『CDラジカセ』がこちらをのぞき込んでいた。

ふむ、実に意味不明だな。だから簡潔に説明しよう。
僕には、生身の体がある。正確には首から下にはだ。では首から上はと聞かれると、それは『CDラジカセ』であると答えるしかないのだ。
本来あるはずの頭がなく、そこには『CDラジカセ』が据わっている。
目も鼻も口も耳もない、思わず悲鳴を上げたらちゃんとラジカセのスピーカーから声が出てくる始末だ。

僕は、慌てて部屋の外に出たさ。
そうしたら、そこには驚きの光景が!?あるはずもなく、ごく自然な知らない街並みがあるだけだった。ただ一点を除いてでだ。

まあその一点と言うのは、街を歩く人々の中に誰一人も真っ当な人間が存在していなかったとうことさ。
僕同様に電化製品を頭の代わりに据えてる化け物もいれば、無機物に手足だけ生やしたようなファンシーな生物もいた。
だがただ一人として、電化製品の代わりに頭をのっけ、体に手足を生やした真面な人間はいなかった。


 僕は、混乱した頭を抱えながら部屋に戻ったさ。
そうすると、来客があったんだ。そいつは頭を抱えている僕を心配そうに覗き込んで「悲鳴が聞こえたけど大丈夫か?」と声をかけてきた。
聞くと、そいつは僕の部屋の隣人で僕の友人らしい。当然、僕は大丈夫じゃないと答える。
ちなみにそいつの頭にはデスクトップPCが据わっていた。


「仕方ないなあ、じゃあ偶々いま神様が舞い降りたところだから。神である俺が友人である君に一つだけ願いを適えてあげよう。だから元気出せよ」


ああ、こいつは何を言っているんだ。まったくさっぱりわからない。
だがしかし、これはまさに異世界転生物語のテンプレートではないだろうか。ならばチャンスを逃してはならない。
混乱した頭で、僕は僕渾身の願いを導き出した。


「亜人ハーレムを築きあげたい」


「……なんだいそれ?まあ、よくわからないから君には無限の可能性を授けることとしよう」


「そんなものいらない。いや、それがあれば義理の妹11人との共同生活ができるかもしれない。くれるならもらっておこう」


さて、他愛のない隣人であり友人であり自称神様との会話をヒントに僕はある仮説にたどり着いていた。
後に、その仮説が正しいということを僕は思い知ることになるのだが。


その仮説とは
「この世界は、人間だけでなく世界観も狂っている」である。


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