32: ◆CItYBDS.l2[saga]
2019/04/07(日) 17:54:12.92 ID:NdD66LHM0
「なら、酒の飲みすぎ。君はサークルコンパに真面目に参加しすぎて、アルコールによる脳障害に侵されているんだ」
「そのせいで、記憶は曖昧だし、この正常な世界が狂って見えているんだ。だがしかし、それは君が実際に見ているものと脳の認識がずれているだけなんだ」
「先日の事件の電卓夫人、君には電卓が言葉を話しているように見えていたかもしれない。でも実際は、彼女は電卓ではなくれっきとした人間だった」
ん、シュレは電卓夫人と面識があったっけ?
「そんなことはどうでもいい」
どうやらシュレは僕の心を読んでいるらしい。
「電卓夫人を見て君は綺麗だ。そう思ったんじゃなかったか?それは彼女が美しい女性だったからだ。もちろん人間のね」
あれ、そうだったっけ。僕が電卓夫人を美人だと思ったのは、そのグラマラスなシルエットからだったような。
「そう、君の違和感は脳の障害からくるものだ。治すには多額の治療費がかかる。だから君は、いつも金欠だったんじゃないか」
どういうわけか、シュレの話は僕に活力を与えるものだった。なんだか、適当なことを辻褄合わせて僕を丸め込もうとしている気もするが。
猫もこたつで丸くなるというし、僕が丸くなったところで何も問題はないのではなかろうか。
それに、なんだか気分も健やかになってきた気がする。世界が狂っているだなんて平民の僕には手があまる。
それよりかは、僕自身が狂っていると信じたほうがスケールがぐっと小さくなって、些細なことに思えてくるではないか。
ならば、精神衛生上そちらのほうが心労は少ないはずだ。
健やかでいられるならば、この苦しみから逃れられるのであらば、僕は僕自身を騙すこともやぶさかではない。
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