3: ◆CItYBDS.l2[saga]
2019/02/22(金) 19:55:30.89 ID:Q3Zc+mWd0
静かな研究室にプシューッと空気の抜ける音が広がった。
研究室には、肩まで伸びた長い白髪にひざ丈まである白衣、上から下まで白で染まった男が一人。
その手には、ピンク色の液体で満ちた円筒状のガラス管が握られている。
「遂に完成したぞ。有史以来、人類が夢に見た薬だ!」
白髪の男の隣には、若い男が一人。彼もまた染み一つない白衣に袖を通している。
「博士、おめでとうございます。ところで、これまで手伝ってきて何なのですがこの薬は一体何なんですか?」
「なに?君は助手だというのに。そんなことも知らずに手を貸してくれていたのか。まあいい、これはかつて秦の始皇帝も喉から手が出るほど欲した不老不死を実現する薬なのだ」
「不老不死ですか?」
「そう、この薬を一たび飲めば決して病気には罹らず、ケガをしてもすぐに治ってしまう、老いることもなくなり、文字通り永遠に生き続けることができるのだ」
助手の訝し気な表情を見ると、博士はニヤリと口角を上げ試験管の液体を一気に喉に流し込んだ。
そうして、まるでそれが一連の流れであるかのように机の引き出しから銃を取り出し自身の頭を打ちぬいた。
「は、博士!?」
助手は、頭から血を流し前のめりに倒れた博士へと駆け寄る。
驚いたことに博士の顔は、とても死んでいるとは思えないほど安らかなものであった。と思いきや、どうも様子がおかしい。
血色は以前にもまして良く、髪も新雪の振った朝のような白から黒光りしたものへと変わり、先ほどこめかみにできたばかりの風穴は完全に塞がれていた。
「ははは、驚いたかね?君が、『不老不死だなんて信じられない』という顔をしていたから実証してあげたまでだ」
「うわぁ、びっくりしたなあもう。しかし、折角できた薬を一人で飲んじゃうなんてズルいですよ!」
「案ずるでない助手君、ちゃんと君の分もある。それどころか、この薬は安価で製造可能だ。全人類に不老不死を与えることができるぞ!」
博士の言葉通り、そのクスリは地球上のどこでも入手が容易な植物で作られており。
ほどなくして、世界から死は消え去った。
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