不死講
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22: ◆CItYBDS.l2[saga]
2019/03/26(火) 19:42:06.09 ID:Dac6MvdP0
 みんなは誤解している。殺人事件なんてものはそうそう起きるものではないし、誘拐事件や爆破テロに至ってはもはや可能性はゼロであると言ってもいい。
……なんか最近、誘拐事件に近いものがあった気がするが気のせいに違いない。なあ、シュレ?

「にゃあ」

先日の一件以来、僕の相棒という地位を獲得した黒猫は律儀に返事を返してきた。
自称神曰く、この黒猫は無限の可能性を秘めているという話であるが。
その可能性の中に、人の言葉を話すという選択肢はないようだ。 
いや、「恋は当然フィフティフィフティ」と何処かの誰かが歌っていたこともあるし、これは色恋沙汰ではないものの僕からの歩み寄りが意思疎通の一歩となるかもしれない。
というわけで、猫の立場になって考えるために、また加えて言えばお腹がすいたところでもあるのでシュレ用に購入した鯖の缶詰を食べることにした。
ふむ、なかなかいけるじゃないか。動物用だからか塩気が全くない気がするが、そこはまあ健康志向ということで問題あるまい。

「にゃあ……」

シュレが抗議めいた鳴き声をあげた。
おお、僕の歩み寄りは大きな成果を生み出したぞ。
シュレの気持ちが少しだけわかったぞ!彼は今、少しだけ怒っている!ごめんよ!

さて、話を戻そう。
そう、現実の探偵事務所に持ち込まれる案件なんてタカが知れてるという話だ。
ではどのような事件が持ち込まれるかというと、一にも二にも浮気調査の依頼である。

もはや探偵とは浮気調査。浮気調査と言えば探偵と言ってもいいほどである。
つまるところ二つは切っても切れない関係ということだ。当の依頼人の夫婦関係が切れているというのに、皮肉なものだ。
どうだろう、今のは少し巧いこと言えたんじゃないかな。どう思うシュレ?
ふむ、眠たげにあくびをしている。どうやら、それほど巧いこと言えたわけでは無さそうだ。


実のところ、僕はこの浮気調査の依頼が嫌いではない。
むしろ、僕が探偵として最も力を入れるのは浮気調査である言っても過言ではないほどだ。
なぜかって?それは、僕が正義の味方であるからだ。

みんなは考えたことがあるかい?
世に女は星の数ほどいるというのに、僕の隣で笑いかけてくれる女性は塵芥ほどもいない。

「にゃあ」

お前は男だろう、すっこんでろ!
いや、すまん気を使ってくれてるんだよな、ありがとうシュレ。


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